アニサキスとは
アニサキスは、長さ15mmほどの白い糸状の寄生虫の一種です。成虫はイルカやクジラの体内に寄生し、幼虫は私たちが食べる魚やシーフードの体内に寄生しています。
アニサキスはオキアミを餌とする魚介類を介して、人間に感染します。アニサキスに感染した際の症状は、軽い腹痛から激痛、腸閉塞まで多岐にわたります。
アニサキスは人間に寄生することはできず、仮に体内に入っても1週間ほどで死滅するため、症状が全く現れない場合もありますが、生きている間は激痛など様々な症状を引き起こします。
アニサキスに感染した場合、内視鏡で直接取り除きますが、取り除くのが難しい場合は、薬で症状を抑える治療を行います。取り除けば、取り除いた直後から症状は治まります。アニサキスは胃の粘膜に隠れていますが、痛みの原因は、アニサキスに対するアレルギー反応で胃の粘膜が腫れ、炎症を起こすためと考えられています。アニサキスは60℃以上で1分間以上加熱するか、-20℃以下で24時間以上冷凍すると死滅します。
魚介類を食べてから数時間~半日後に上腹部痛、下腹部痛、吐き気、嘔吐、発熱などの症状が見られた場合はアニサキス症の可能性もありますので、早めに当院へご相談ください。また、当院では当日の胃内視鏡検査も可能ですので、お気軽にご相談ください。
アニサキスの症状
胃アニサキス症
胃アニサキス症は、魚介類を食べた際に口から体内に入ったアニサキスが、胃壁に突き刺さることによって起こるアレルギー反応です。
日本国内で報告されているアニサキス症の症例の90%以上が胃への感染とされています。
アニサキスが口から体内に入り、3~4時間以内に上腹部痛、吐き気、嘔吐などの症状が現れます。治療は内視鏡を使ってアニサキスを取り除くことによって行います。アニサキスを取り除けば、症状もすぐに消えます。なお、胃の中にアニサキスがいても、必ずしも胃アニサキス症を発症するとは限らず、中には症状が出ない方もいらっしゃいます。
腸アニサキス症
アニサキス症とは、魚介類を食べた際に口からアニサキスが体内に入り、腸内に寄生することで起こる症状です。口から感染すると、数十時間~数日で激しい下腹部痛、吐き気、嘔吐、発熱などの症状が現れます。まれに腸閉塞や穿孔を起こすことがあり、その際には入院治療が必要となります。
消化器外アニサキス症
消化器外アニサキス症は、口から体内に入ったアニサキスが消化管を突き抜け、腹腔内を移動し、周囲に付着する疾患です。アニサキスが消化管を通過した後、大網、腸間膜、腹壁の皮下組織などに移動し、肉芽腫を形成する場合もあります。
症状はアニサキスが寄生した部位によって異なります。なお、消化器外アニサキス症は、胃腸アニサキス症と比較すると極めてまれな疾患です。
アニサキスアレルギー
アニサキスアレルギーは、アニサキスに含まれるタンパク質に対するアレルギーのことです。
アニサキス症は、アニサキスが寄生した食品を、生で食べることによって起こる食中毒です。一方アニサキスアレルギーは、アニサキスが持つタンパク質や分泌液に対するアレルギー反応であるため、アニサキス本体が生きていても死んでいても、加熱されていてもされていなくても、関係なくアレルギー反応が起こる可能性があります。経口感染後、蕁麻疹、低血圧、呼吸不全、意識喪失などの症状が現れます。
アニサキスとアナフィラキシー
アニサキスのアレルギー反応により、アナフィラキシーが起こる可能性があります。
アレルゲンに晒されることによって引き起こされ、重篤な症状や複数の臓器(皮膚、粘膜、呼吸器、消化器、循環器など)にわたる全身症状を引き起こす可能性があります。
具体的には、蕁麻疹などの「皮膚症状」、くしゃみ、咳、息切れなどの「呼吸器症状」、目のかゆみや腫れ、唇の腫れなどの「粘膜症状」、腹痛や嘔吐などの「消化器症状」、低血圧などの「循環器症状」などがあります。アナフィラキシーの特徴は、これらの症状が急速に全身に現れ、複数の臓器に影響を及ぼす点です。
アニサキスは、食物と薬品に次いで3番目に多いアナフィラキシーの原因です。また、ご自身で青魚アレルギーだと思い込んでいる方が、実際にはアニサキスアレルギーであったと判明することもよくあります。
アニサキスが発見されやすい魚
あらゆる種類の魚に寄生する可能性があるアニサキスですが、特に以下の種類の魚に寄生する傾向が強いようです。
- サバ
- イカ
- ホタルイカ
- サンマ
- サケ
- イワシ
- タラ
- ホッケ
- ニシン
- マス
- カツオ
アニサキスの検査
まず問診を行い、患者様が魚を生で食べてから急に腹痛になったなど、胃の中にアニサキスがいる可能性が考えられる場合には、胃内視鏡検査を行います。胃内視鏡検査とは、鼻または口から、カメラが先端についた内視鏡スコープを挿入して食道・胃・十二指腸をリアルタイムで観察する検査です。
アニサキスは肉眼でも見えますので、胃内視鏡検査を受ければ、胃の中のアニサキスを直接見つけることができます。
もし、アニサキスが胃を通り過ぎて小腸にいると思われる場合は、超音波検査、X線検査、血液検査、CTスキャンなどを行うことができますが、胃よりも奥の小腸などにアニサキスがいることを証明するのはかなり難しいとされています。
また、アニサキスの有無は血液検査でも調べることが可能です。
アニサキスの治療
胃内視鏡検査でアニサキスが発見された場合、その場で取り除くことが可能です。アニサキスを取り除けば、すぐに症状は改善します。
腸アニサキス症など、内視鏡で取り除くのが難しいケースでは、薬で症状を抑えながら自然にアニサキスが死滅するのを待つ対症療法を行います。アニサキスを効果的に駆除する駆虫薬は現在のところまだありません。
アニサキスへの予防
アニサキス症は、生の魚介類を食べることで発症するリスクが高いため、60℃以上で1分間以上加熱するか、-20℃以下で24時間以上冷凍して死滅させてから食べることで、アニサキス症を予防できると言えます。
また、アニサキスの大きさは15mm程度であるため、調理や食事の際には目で注意しながら確認することが大切です。
魚の臓器に寄生しているアニサキスは、魚が死ぬと、魚の臓器から体の方へ移動する特性があります。そのため刺身などの魚を生で食べる場合は、魚が生きた状態で内臓と共にアニサキスを取り除くことで、アニサキス症の発症リスクを軽減できます。
また、アニサキスにアレルギーをお持ちの方は、たとえアニサキスを完全に除去した場合や、魚を十分に冷凍または加熱した場合でもアレルギー反応が起こる可能性があるため、注意が必要です。寄生虫が寄生している可能性のある魚介類は、できるだけ避けるようにしてください。
アニサキスQ&A
アニサキスの寿命はどのくらい続くのですか?
アニサキスは、人体内で生存できるのは最大でも4日間です。ただし、死滅後もしばらく症状が続くことがあります。
また、アニサキス症を放置すると、小腸粘膜に食い込んで穴を開けたり、炎症が悪化したりすることもあるので、激しい腹痛を感じたら早めの対処が必要です。
よく噛めばアニサキスは死滅しますか?
アニサキスは物理的な攻撃に弱く、傷つけばすぐに死滅しますので、よく噛むことはアニサキス症を予防するのに効果的です。
しかし、よく噛めばアニサキス症にならないとは限りません。本来、アニサキス自体には毒素はありませんが、中にはアニサキスにアレルギーのある体質の方がいらっしゃいますので、注意する必要があります。