自覚症状がない?
食道がんについて
食道がんは早期に発見できれば、内視鏡切除で完治できますが、進行している場合は手術や放射線治療、化学療法が必要となり、肉体的にも精神的にも負担が大きくなります。そればかりか、治療により食事や発声に支障が出ることもあります。
しかし、食道がんの初期には自覚症状がほとんどなく、胸痛や圧迫感などの症状が現れるのはがんが進行してからであるため、発見が遅れがちです。自覚症状のない早期食道がんを発見し、診断を確定できる検査は胃内視鏡検査が唯一の方法ですので、発症リスクの高い方は症状がなくても定期的に内視鏡検査を受けることが早期発見に繋がると言えます。
患者数は50代から増加し、70代にピークを迎え、男性の発症が多いのが特徴です。 扁平上皮がんと腺がんに大別され、日本では食道がんの90%以上が扁平上皮がんです。
食道がんの症状
初期にはほとんど自覚症状がありませんが、進行するにつれて症状が現れてきます。
- 胸の痛み
- 背中の痛み
- 胸のつかえ感
- 嚥下時のしみるような感覚
- 体重の減少
- 咳
- 声のかすれ
胸のつかえ感は進行した食道がんに現れやすい症状です。飲み込みにくさを感じたら、早めに当院へご相談ください。症状がさらに進行すると、体重減少や声のかすれなどの症状が現れ始めます。
食道がんの原因
食道がんの中でも扁平上皮がんと腺がんでは、リスク要因がそれぞれ異なります。
食道がんの多くを占める扁平上皮がんの最大のリスク要因は、飲酒と喫煙です。この2つの習慣を併せ持つと、リスクはさらに高まります。たばこの煙には、複数の発がん物質が含まれています。飲酒をすると、体内で発がん物質であるアセトアルデヒドが生成されます。日本人の多くは、体質的に体内のアセトアルデヒドを分解する酵素の働きが弱く、そうした体質の方々は扁平上皮がんの発症リスクが高いと言えます。また、お酒を飲むとすぐに顔が赤くなる体質の方は、アセトアルデヒドを分解する酵素の働きが弱く、食道がんの発症リスクが高いと言えます。
飲酒や喫煙以外では、熱い食べ物を口にする機会が多いこともリスク要因となります。また、食道内に食べ物がたまってしまう食道アカラシアがあると、やはり食道がんの発症リスクが高くなります。
また、逆流性食道炎による長期の炎症は、腺がんのリスク要因として指摘されています。炎症が長期化すると、噴門部食道にまで進行し、腺がんの発症リスクがさらに高まります。また、肥満や喫煙も腺がんのリスク要因として知られています。
お酒を飲むと赤くなる人は食道がんになりやすい?
お酒を飲むとすぐに顔が赤くなる方は、アセトアルデヒドを分解する酵素がもともと弱いとみなされ、食道がん(扁平上皮がん)になる危険性が高いと言えます。また、お酒を飲み続けるうちに強くなったという方も、危険性が高いことに変わりはありませんのでご注意ください。
アルコールは肝臓で分解されて毒性の強いアセトアルデヒドになり、アセトアルデヒド脱水素酵素によって無害な酢酸に分解されます。アセトアルデヒドは発がん性物質であり、日本人の約45%はアセトアルデヒド脱水素酵素の活性がもともと弱いと言われています。生まれつきお酒を分解する酵素の働きが弱い人は、飲酒するとすぐに顔が赤くなります。このような体質の人は、体内に有害なアセトアルデヒドがたまりやすく、大量にお酒を飲むと食道がんのリスクが通常よりも数十倍高くなる可能性があると指摘されています。
食道がんの検査
食道がんの早期発見と確定診断が可能な胃内視鏡検査
胃内視鏡検査では、胃に加えて食道や十二指腸の粘膜も詳しく観察することができます。当院では、オリンパス社製のNBI(早期食道がんの発見を容易にする特殊光)を用いて、内視鏡専門医が高度な観察を行っています。これにより、表面変化に乏しい早期食道がんの発見が可能になりました。また、一部の専門医しか行えない食道がんに対する粘膜下層剥離術も行っており、この分野では高い技術を誇っています。
さらに、胃内視鏡検査では組織採取も可能ですので、病理検査によってがんなどの疾患を確定診断することが可能です。
当院では、吐き気や痛みの少ない経胃内視鏡検査を選択していただけますし、鎮静剤を使用して眠っているような深いリラックス状態のまま検査をお受けいただくこともできます。経口内視鏡検査でも、鎮静剤を使用すれば楽に行えますので、より高度な観察も可能です。
食道がんの治療
早期の食道がんであれば、内視鏡的切除(内視鏡的粘膜下層剥離術:ESD)で治療できると考えられます。低侵襲手術が可能であれば、肉体的・精神的負担は少なく、入院期間は1週間程度で済みます。
進行した食道がんであれば、手術と化学療法、放射線療法を組み合わせた治療が行われます。これには、より肉体的・精神的な負担が大きい治療が必要となり、治療期間もその分長くなります。また、手術の種類によっては、声が出にくくなったり、ものを飲み込みにくくなったりする可能性もあります。
食道がんは早期発見によりその後の治療や生活に大きな違いが生まれます。特に飲酒や喫煙の習慣のある方、逆流性食道炎の症状が長く続いている方は食道がんになるリスクが高いので、症状がなくても定期的に内視鏡検査を受けて早期発見に繋げましょう。