このような症状はありませんか?
以下のような表現として、胃もたれの症状が現れることがあります。このような症状が現れた場合は、当院にご相談ください。
- 胃が重い
- 胃のあたりが痛んで苦しい
- 食べたものが消化されていない感じがする
- 胃のむかつきで夜中に目が覚める
- 胃の膨満感が見られる
など
胃もたれとは
胃もたれとは、食べ物が胃の中に留まって消化不良を起こしている状態を指します。消化の悪いものを食べたときや、胃の働きを司る自律神経の乱れによっても起こります。
また、胃もたれは、インフルエンザや感染性胃腸炎といった、感染症の初期症状として現れることもあります。
胃もたれの原因が感染性疾患である場合は、発熱や下痢などの症状を伴うことが多いため、治療もそれらの症状に合わせて行われます。その他、胃もたれに胃痛や腹部の膨満感、げっぷなどの症状を伴うこともあります。
胃もたれの原因
胃もたれの原因としては、主に食べ過ぎや飲み過ぎ、消化の悪いものを食べること、ストレス、胃の機能の低下、自律神経の疾患、ピロリ菌の感染などが考えられます。
胃機能の低下
食べ物が胃に入ると、食事後2~3時間で消化される場合が一般的ですが、胃に負担がかかり消化機能が低下すると、胃に入った食べ物が消化されにくくなり、胃の中に長くとどまることで胃もたれが起こります。暴飲暴食、脂肪分の多いもの、アルコール、香辛料など刺激の強いもの、酸味の強いもの、炭酸飲料、カフェインなどをなるべく控えるようにしましょう。
ぜん動運動の低下
ぜん動運動とは、胃や腸の筋肉の収縮と弛緩によって食べ物が押し進められる動きのことです。胃の中で食べ物を押し進めるぜん動運動が低下すると、胃の中に食べ物が長くとどまり、胃もたれを感じやすくなります。ぜん動運動の低下は、加齢や運動不足によって起こります。また、喫煙もぜん動運動を遅くしますので、禁煙することをお勧めします。
自律神経の乱れ
胃の働きを司る自律神経に不調をきたすと、胃の働きがうまく制御できなくなり、胃もたれを感じます。
女性の場合は、生理前のホルモンの変動によっても胃もたれを感じることがあります。月経周期と胃もたれを感じる時期を照らし合わせることで、症状が出やすい時期を把握し、その時期には消化の良いものを少しずつ食べるなどの対策を講じるのに役立ちます。
ピロリ菌感染
ピロリ菌に感染していると、ピロリ菌が産生する有害物質(アンモニアなど)により胃の不快感をもたらす場合があります。
ピロリ菌は胃炎から萎縮性胃炎、胃潰瘍へと進行し、胃がんの原因にもなるため、ピロリ菌感染の検査で陽性と出た場合は除菌治療が必要です。
除菌できれば、炎症や潰瘍の再発リスク、胃がんのリスクを大幅に減らせます。
寝る直前の食事
睡眠中は消化が行われず、食べたものが胃の中に長くとどまるため、胃もたれが生じやすくなります。
また、就寝の直前に食事をする習慣が続くと、胃のもたれが慢性化することがあります。就寝の数時間前には食事を済ませ、消化の良いものを摂ることで改善できます。
女性に胃もたれが続く原因
女性に慢性的な胃の不快感が続く原因として、以下のようなものが考えられます。
- 月経前症候群(PMS)
- 妊娠
- 更年期
それぞれの理由について詳しくご説明します。
月経前症候群(PMS)
PMSとは、月経前症候群(Premenstrual Syndrome)の略で、その症状のひとつに胃もたれがあります。通常、生理が始まる約1週間前から始まり、生理が始まると自然に改善することが多いようです。
PMSは、ホルモン、生活習慣、ストレスなど、様々な要因が組み合わさって生じると考えられており、医療機関に相談したり、生活習慣やストレス対処法を見直したりすることで、緩和されることもあります。
妊娠
個人差はありますが、妊娠すると、次のような症状が現れることがあります。
- 胃もたれ
- 胸やけ
- 食欲の減退
- 吐き気や胃痛
上記は、一般的に「つわり」と呼ばれる症状です。
生理が遅れていて、もしかしたら妊娠しているかも、という場合には、胃の不快感が「つわり」の症状である可能性が考えられます。妊娠検査薬での確認や、産婦人科の受診をお勧めします。
更年期
胃もたれは、更年期の症状である自律神経の乱れによって生じることもあります。
自律神経は呼吸や消化など生命維持に必要な機能を司っています。自律神経が乱れると食べ物がうまく消化されず、胃もたれに繋がることもあります。
更年期の症状や感じ方は人によって異なり、医療機関を受診すべきかどうか迷う方も少なくないと思います。まずはセルフチェックで更年期の症状を把握してみましょう。
胃もたれで考えられる疾患
胃にムカムカした不快感がある、胃もたれがするといった症状がある場合は、食道・胃・十二指腸といった上部消化管のトラブルが考えられます。また、心臓や血管といった循環器や、腸など下部消化管など別の臓器の疾患が関係していることもあるため、注意が必要です。こうした症状に関係する代表的な疾患を以下にご紹介します。
逆流性食道炎
胃の内容物が食道内に逆流し、その状態が慢性化して食道の粘膜に炎症を起こす疾患です。主な症状は、声のかすれ、のどや前胸部のつかえ感、飲み込みにくさ、げっぷ、胃のもたれ感、胸痛、胸やけなどです。主に薬の副作用、腹部を圧迫するような作業や姿勢、下部食道括約筋の弛緩などが原因となって逆流性食道炎を起こすと考えられています。
食道がん
食道がんは、食道の粘膜にできるがんで、初期の段階では自覚症状がほとんどないのですが、悪化すると、声がれ、咳、胸やけ、痛み、食べ物を飲み込むときの違和感などが現れます。 アルコールやたばこが原因で発症することが多く、お酒で顔が赤くなる人は特に注意が必要です。
急性胃炎・慢性胃炎
急性胃炎・慢性胃炎はどちらも胃もたれを誘発することがあります。「急性胃炎」は食べ過ぎや飲み過ぎ、ストレスなどが原因で起こり、「慢性胃炎」はピロリ菌の感染が原因で起こります。
胃潰瘍・十二指腸潰瘍
症状としては、胃もたれの他にげっぷ、胸やけ、吐き気、嘔吐、みぞおちの痛みなどが現れます。悪化すると、胃や十二指腸の粘膜が深く損傷し、出血や下血、吐血の原因となることがあります。抗炎症薬の副作用やピロリ菌感染などが原因として考えられます。
胃がん
胃がんは主にピロリ菌の感染によって、胃の粘膜にできるがんです。初期には自覚症状はほとんどありませんが、進行すると吐き気、嘔吐、食欲不振、胃のもたれ、胃痛などが現れます。また、がん細胞からの出血により黒色便が見られる場合もあります。
機能性ディスペプシア
胃の知覚機能や運動機能が何らかの要因によって低下し、早期満腹感(少し食べただけで満腹になる)、げっぷ、吐き気、胃痛、胃のもたれ感などの症状が慢性化した状態です。
検査を受けても、内分泌系や消化器系に明らかな異常が見つからないのが特徴です。
腸閉塞
腸閉塞とは、大腸がんや腹膜炎、腸の手術後の癒着などにより腸管が狭くなり、ガスや便がたまりやすくなる疾患です。症状としては胃もたれに加え、腹部膨満感や激しい腹痛などがあります。その他、おならや便が出そうで出ないといった症状も特徴的です。
虫垂炎(盲腸)
一般的に「盲腸」と呼ばれる虫垂の端から突き出た部位に便などが入り込み、炎症を起こす疾患です。初期症状ではみぞおちのあたりに痛みや胃もたれを覚えることがあります。悪化すると、徐々に痛む場所が下に移動し、最終的には右下腹部に激痛が走ります。
循環器疾患
心筋梗塞などの循環器疾患の場合にも、胃もたれやみぞおちの痛み、吐き気、急な体調不良などの症状が現れることがありますので、注意が必要です。
胃もたれの診断・検査
当院ではまず、問診により精査・治療が必要かどうかを判断します。問診後、血液検査や胃内視鏡検査(胃カメラ)、腹部エコー検査を行い、その結果を踏まえて総合的に診断します。
胃内視鏡検査
胃内視鏡検査(胃カメラ検査)は、先端に内視鏡カメラを備えたファイバースコープを口または鼻から挿入し、食道・胃・十二指腸といった上部消化管の粘膜の状態をリアルタイムで確認できる検査です。検査中に異常が疑われる組織があれば、その部位のごく一部を採取し、病理検査を行うことで、より正確な診断に繋げることも可能です。
この検査は、胃がんをはじめとする消化管の疾患を早期に発見する上で非常に有効とされており、早期に適切な治療を行うことで、完治の可能性も高くなります。
当院では、日本消化器内視鏡学会の認定を受けた内視鏡専門医が検査を担当しています。検査前後のご説明や、結果、治療に関する内容も丁寧かつわかりやすくご説明しますので、検査に関してご不明な点や不安なことがあれば、どんなことでもお気軽にお尋ねください。
胃もたれが続く際の治療方法
胃もたれの治療は、まず原因の見極めから始まります。血液検査や胃内視鏡(胃カメラ)、腹部エコーなどの検査で明らかな異常がない場合には、生活習慣の見直しや食事内容の改善が重要です。
必要に応じて、胃酸の分泌を抑える薬(P-CAB、PPI、H2ブロッカーなど)や、胃の動きを整える薬、胃粘膜を保護する薬を使いながら症状の改善を図ります。ピロリ菌の感染がある場合には、除菌治療も行います。
ピロリ菌の除菌治療
ピロリ菌は幼少期に体内に入り込み、その後も長期間にわたって胃に炎症をもたらします。先進国では衛生環境の改善により感染率は減少していますが、日本では依然として多くの感染者がいます。
ピロリ菌の感染が長期化すると、胃の粘膜に持続的な炎症を引き起こし、結果として慢性胃炎を発症することがあります。炎症が進行しても体調に変化を感じにくいため、ご自身が気づかないうちに病状が進み、萎縮性胃炎や胃がんになるリスクが高くなります。
ピロリ菌の感染が疑われる場合は、まず検査を受けることをお勧めします。陽性と診断された際には、速やかに除菌治療に取り組むことで、将来的なリスクを軽減できます。
除菌治療は、胃酸分泌抑制薬を1種類と、2種類の抗菌薬を7日間服用するだけという、比較的簡便な方法です。治療後8週間ほど経ったところで再検査を行い、除菌が成功しているかどうかを確認します。万一、初回で菌が完全に除去できなかった場合でも、2回目の除菌治療によって90%以上の確率で除菌が成功します。そのため、ほとんどのケースにおいて、最終的に菌を完全に排除することが可能です。
食事の改善
ゆっくりよく噛んで食べることが大切です。また、一度にたくさんの量を食べるのではなく、何回かに分けて軽く食べることで胃への負担を減らすことができます。脂肪分や香辛料を多く含むもの、酸味の強いものは控えめにすることも大切です。
生活習慣の改善
生活習慣の改善として、まず取り組んでいただきたいのが食生活の改善です。食事の内容や量を工夫し、脂肪分や辛いものを食べ過ぎないように注意しましょう。また、食事の際にはよく噛んで食べ、就寝の2時間前には夕食を終えるようにすることも大切です。
年齢を重ねると運動量が減りやすくなるので、運動を毎日の習慣にすることが大切です。運動には胃腸の動きを促進し、血行を良くする効果があります。運動に慣れていない方は、ウォーキングや軽い運動など、体に負担の少ないものから始めましょう。
ストレスの改善
胃もたれが精神的なストレスから生じている場合は、リラクゼーション法や適度な運動が症状の改善に役立ちます。何か趣味や運動を積極的に始めてみるなど、ご自分に合ったストレス解消法を見つけてみましょう。