大腸ポリープ切除について
大腸ポリープとは、粘膜にできる良性の腫瘍がポリープです。盛り上がっているように見えることが多いですが、初期の段階では平らな場合も多くあります。大腸ポリープには何種類かありますが、そのほとんどは良性の「腺腫」です。それ自体は良性ですが、放置するとがん化する可能性があるため、「前がん病変」と呼ばれています。
当院では、大腸内視鏡検査でポリープが見つかり、切除が必要と判断された場合には、特殊な照明や拡大内視鏡で詳細に観察した上で、検査の際にその場で切除しています。
これにより、将来の大腸がんを予防できるだけでなく、別の日に手術の予定を立てる必要がなく、検査前の食事制限や下剤の服用も1回で済みます。入院の必要もありません。
大腸ポリープ・大腸がんの早期発見が可能
大腸内視鏡検査では、大腸の粘膜をくまなく詳細に観察することが可能です。当院では特殊光や画像処理、拡大観察が可能な最新式の内視鏡システムを導入し、微細な病変も発見できるようになりました。がんには毛細血管が周囲に集まるという特徴がありますので、粘膜表面に異常がない早期の状態でも特殊光で血管を浮き上がらせることによって発見することが可能です。
当院では、大腸のヒダの奥に隠れた部分まで観察できるスコープを使用しており、短時間で精密な検査を行うことができます。検査中に前がん病変であるポリープを発見した場合は、その場で切除できます。このように検査時に治療を行うことで、大腸がんの予防に繋げることができます。
大腸ポリープの切除方法
一般的に大腸ポリープの切除は、大腸内視鏡を用いて行われます。主な切除方法は、①ポリープ切除術、②EMR(内視鏡的粘膜切除術)、③ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)の3種類です。ポリペクトミーとEMRは、内視鏡の先端にリング状の装置であるスネアを装着して行います。
ポリペクトミー
ポリペクトミーには、高周波電流を用いてポリープを切除する「ホットポリペクトミー」と、電流を用いずにポリープを切除する「コールドポリペクトミー」の2種類があります。
ホットポリペクトミーには、スネアを用いて、茎が太く基部がしっかりとして大きな大腸ポリープ(0-I型)を切除するpolypectomyと、鉗子を用いて5mm以下の小さなポリープを切除するHB(Hot Biopsy)があります。
一方、茎がなく、10mm以下の比較的小さなポリープを切除する方法として有効なのが、コールドポリペクトミーです。術後の出血が少なく、穿孔の危険性も低いことから、広く行われている治療法です。コールドポリペクトミーには、スネアを用いてポリープを切除するCSP(Cold Snare Polypectomy)と、3mm以下の小さなポリープを鉗子で切除するCFP(Cold Forceps Polypectomy)の2種類があります。主に日帰り手術で行われます。
EMR(内視鏡的粘膜切除術)
EMRは、大腸ポリープの形が平坦な場合に用いられる方法です。ポリープをそのままスネアに引っかけて切除することが難しいため、EMRでは、生理食塩水などを大腸粘膜下に注入してポリープを隆起させ、それをスネアで切除します。
EMRは主に20mm以下の大きさの腺腫や早期の大腸がんの切除に用いられます。一般的に10mm以上の病変を切除する手術を行うと出血やがん化のリスクが高まるため、EMRが推奨されています。しかし、病変が20mmを超えると手術中の出血のリスクが高まるため、入院治療による病変の切除が検討されます。
ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)
ESDは、主にポリペクトミーやEMRでは切除が困難な大きな病変を切除する方法です。 ESDでは電気メスに似た器具で病変を切除します。ESDは入院治療が必要なため、当院では対応しておりません。その場合は、当院が提携している高度医療機関をご紹介し、スムーズに適切な治療を受けていただける態勢を整えています。
切除後にご注意いただくこと
大腸ポリープ切除は体に負担の少ない低侵襲な手術ですが、手術であることに変わりはなく、合併症の可能性が全くないわけではありません。出血や穿孔などの深刻な合併症を起こさず、できるだけ早く回復するためには、手術後にいくつかの制限を守っていただく必要があります。
これらの制限のほとんどは、数日~1週間程度のものです。血液の循環が良くなったり、腹圧が上昇したり、腸を刺激する食べ物を摂取したりすることで合併症のリスクが高まる可能性があるため、運動、食事、入浴、飲酒などに関する制限を守る必要があります。大腸内視鏡検査を受ける場合は、ポリープの切除が必要になる可能性を考慮し、検査後1週間ほどは長距離の移動を避けるよう、ご予約日を調整してください。
検査当日
帰宅後は安静にして、早めに就寝してください。
入浴
検査当日は軽いシャワーのみにしてください。翌日からは浴槽に入浴していただけますが、1週間程度は長時間の入浴を避けてください。
食事
手術当日は、ゼリー、プリン、ヨーグルト、豆腐など腸に刺激の少ないものを食べ、体調を見ながら徐々に通常の食事に戻しましょう。しばらくは脂肪分の多いものや香辛料は控えてください。
飲酒
飲酒は医師の許可があるまでは控えてください。
運動
軽い散歩は問題ありませんが、それ以外の運動は腹部を圧迫して出血の危険性を高めるため、1週間程度は控えてください。また、運動を再開できる時期は体調だけでなく運動の種類によっても異なりますので、事前に主治医にご相談ください。
旅行・出張
座ったまま長時間過ごすことで腹部が圧迫され、出血の危険性が高まるため、1週間程度は長距離の移動は避けてください。特に飛行機では気圧の変化が大きいため、出血の危険性が高まります。また、遠方への移動の場合、万一の際に適切な治療や処置が遅れる可能性もありますので、その点でも長距離の移動は避けていただくようお願いします。
大腸ポリープの切除費用
大腸内視鏡検査・手術
項目 | 1割負担 | 2割負担 | 3割負担 |
---|---|---|---|
大腸内視鏡 (観察のみ) |
¥2,500~ |
¥5,000~ |
¥7,000~ |
大腸内視鏡 (生検のみ 1臓器) |
¥4,000~ |
¥8,000~ |
¥11,000~ |
大腸内視鏡 (生検のみ 2臓器) |
¥5,000~ |
¥10,000~ |
¥15,000~ |
大腸内視鏡 (生検のみ 3臓器) |
¥6,000~ |
¥12,000~ |
¥18,000~ |
大腸内視鏡ポリープ (1臓器) 2cm未満 |
¥8,000~ |
¥16,000~ |
¥24,000~ |
大腸内視鏡ポリープ (2臓器) 2cm未満 |
¥9,000~ |
¥18,000~ |
¥26,000~ |
大腸内視鏡ポリープ (3臓器) 2cm未満 |
¥10,000~ |
¥20,000~ |
¥29,000~ |
大腸内視鏡ポリープ (1臓器) 2cm以上 |
¥10,000~ |
¥20,000~ |
¥29,000~ |
大腸内視鏡ポリープ (2臓器) 2cm以上 |
¥11,000~ |
¥21,000~ |
¥32,000~ |
大腸内視鏡ポリープ (3臓器) 2cm以上 |
¥12,000~ |
¥23,000~ |
¥35,000~ |
※診察代、採血代などは別料金になります。
※下剤の種類、鎮痙剤の種類によって料金が異なります。
大腸ポリープのよくある質問
大腸ポリープを放置すると、大腸がんになるまでどのくらいの期間がかかりますか?
一般的に、大腸ポリープから大腸がんになるまでには数年かかると言われていますが、ポリープの大きさや種類、健康状態、遺伝的要素、細胞の異常の程度(異形成)などによって異なり、進行する期間にも個人差があります。
いずれにしても、ポリープは早期に切除することが望ましいです。
大腸ポリープは、どのくらいの確率で悪性腫瘍に進行しますか?
5mm以下のポリープの場合
諸説ありますが、一般的には5mm以下のポリープが大腸がんに進展する確率は1%以下と考えられており、日本では経過観察を行うことが一般的です。
5mm~1cm(10mm)のポリープの場合
ポリープの大きさが5mmから10mmの腫瘍性の場合、がん化する確率は1%~10%です。ただし、ポリープの形(有茎性か無茎性か)や大きさによっても確率は異なります。
1cm(10mm)のポリープの場合
ポリープの大きさが1cm程度の場合、約10%がすでにがん化している可能性があります。そのため、1cm程度の大きさの大腸ポリープが見つかった場合は、切除して病理検査を受けることをお勧めします。
2cm(20mm)以上のポリープの場合
ポリープの大きさが2cmを超えると、その何割かがすでにがん化していると考えられ、大腸がんに進行する確率が20~40%まで一気に高まると報告されています。特に2cm以上の絨毛腺腫が見つかれば、がん化する危険性が極めて高いと考えられ、見つかった時点で切除して病理検査を受ける必要が生じます。