受診が必要な
胃の痛み(胃痛)
胃痛の表現には、「シクシクと沁み込むような痛み」「キリキリと突き刺すような痛み」「ズキズキと拍動するような痛み」「キューッと締め付けられるような痛み」など様々なものがあります。医師はこれらの表現を手がかりにしますので、できるだけ実際の痛みに近い表現で伝えてみるようにしてください。
一般的な表現として「シクシク」は鈍い痛み、「キリキリ」は鋭い痛み、「ズキズキ」は脈打つような痛み、「キューッと」は圧迫されるような痛みを指します。
緊急性が高くない胃痛
一時的な胃痛で、繰り返し起こらない場合は、それほど深刻な状態ではないと考えられます。心配な場合は、病院で経過観察を受けることをお勧めします。
病院で診察が必要な胃痛
胃痛が長く続く、胃痛に胸やけや発熱、下痢、便秘などを伴う、胃痛が断続的に繰り返される、胃痛に食欲不振や体重減少が伴う場合などは、治療が必要な疾患が隠れている可能性がありますので、早めの受診をお勧めします。お気軽に当院へご相談ください。
すぐに病院に行くべき胃痛
突然の激しい胃痛、胃痛に冷や汗を伴う、胃痛の発生部位を押して手を離すと痛みが強くなる、胃痛に嘔吐や吐血を伴う、歩行に伴い胃痛が強くなる場合などは、緊急を要する可能性が高いため、早めに当院へご相談ください。
胃痛の原因
胃痛の原因は、胃の粘膜が傷ついたり、胃の機能が低下したりと、様々な要因が考えられます。主な要因を以下にご説明します。
食生活
偏った食事や不規則な食生活は、胃の粘膜を傷つけることがあります。食べ過ぎや辛すぎる食べ物は胃や腸に負担をかけてしまいます。
特に、辛い食べ物、酸味の強い食べ物、カフェイン、アルコールなどは胃の粘膜を刺激して胃痛の原因となります。また、脂肪分の多い食べ物など消化の悪いものは、胃酸を大量に分泌させて胃の粘膜に負担をかけるので、できるだけ避けるようにしましょう。
ストレス
長期間にわたってストレスを受け続けると、自律神経が乱れ、自律神経によって制御されている胃腸の機能も乱れてしまい、胃痛に繋がります。
また、ストレスは胃酸の分泌を促進し、胃の粘膜を傷つけて胃痛を引き起こすこともあります。ストレスは精神的なものだけでなく、疲労や睡眠不足などの身体的要因や、気温や湿度などの環境的要因によっても引き起こされます。十分な睡眠と定期的な休憩を取ることも、ストレスを軽減するのに効果的です。
ピロリ菌
ピロリ菌に感染すると胃の粘膜に慢性的な炎症が起こります(萎縮性胃炎)。たいていの場合は無症状ですが、胃痛の原因となっている場合があります。また、ピロリ菌による萎縮性胃炎は胃潰瘍や胃がんになるリスクを高めます。
胃痛を伴う消化器疾患
急性胃炎
急性胃炎は、急激な胃痛、胃のもたれ、吐き気などの症状を引き起こし、キリキリと鋭く、刺すような痛みを伴うことが多いです。急性胃炎は主に、暴飲暴食、辛いものなどの刺激の強い食べ物、アルコールの過剰摂取、細菌やウイルスによる感染、鎮痛剤(非ステロイド性抗炎症薬)の副作用などが原因となって起こると考えられています。
急性胃炎は治療が必要な疾患が原因で起こる場合もありますので、気になる胃の痛みがある場合は早めの受診をお勧めします。
慢性胃炎
慢性胃炎は、胃の内側を覆っている粘膜に慢性的な炎症が続く疾患です。主な症状としては、胃痛、胃もたれ、腹部膨満感、吐き気などが見られます。
この疾患の最大の原因とされているのがピロリ菌の感染です。ピロリ菌に感染すると、細菌が作り出す毒素や炎症を引き起こす物質の影響により、ほぼ100%と高い確率で慢性胃炎が生じます。
さらに、ピロリ菌による慢性胃炎は、胃潰瘍や胃がん、胃の過形成性ポリープなど、様々な疾患のリスクを高めることが明らかになっています。そのため、ピロリ菌に感染していることが確認された場合には、早期に除菌治療を行います。
逆流性食道炎
逆流性食道炎は、胃酸や胃の内容物が食道に逆流し、食道の粘膜に炎症を引き起こす疾患です。食道と胃の境目に位置し、胃の内容物の逆流を防ぐ役目をする下部食道括約筋の機能が弱まることによって発症します。胸やけ、酸の逆流、胃痛、咳、喉に何かがつかえた感じなど、様々な症状が現れるのが特徴です。
逆流性食道炎が慢性化すると、食道下部の細胞が胃の粘膜に似た細胞に変化し(バレット食道)、食道腺がんに繋がるリスクが高くなります。
胃・十二指腸潰瘍
胃潰瘍や十二指腸潰瘍とは、胃酸による刺激から胃や十二指腸の粘膜を守る機能が弱まり、その結果として組織の一部が溶けて、深くえぐれた傷ができる疾患です。主な原因としては、ピロリ菌への感染や、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の服用などが挙げられます。
現れる症状には、強い胃の痛み、吐き気、嘔吐、食欲の低下、お腹の張り、吐血、下血などがあります。治療を行わずに放置してしまうと、潰瘍が進行し、胃や十二指腸の壁に穴が開いてしまう危険性もあるため、早期に適切な処置を受け、再発防止に努めることが重要です。
再発を防ぐ手段として、ピロリ菌の除菌は非常に効果的です。また、胃潰瘍は食後に痛みが強くなる傾向があり、反対に十二指腸潰瘍では空腹時に痛みが出やすいという特徴があります。
機能性ディスペプシア
機能性ディスペプシアとは、胃内視鏡検査では病変が確認できないものの、胃痛、膨満感、吐き気、胃のもたれ感などの不快な症状が現れる疾患です。
胃がんや胃潰瘍、胃食道逆流症などの可能性もあるため、このような症状がある場合は、胃内視鏡検査を受けて適切な診断を受けることが大切です。
機能性ディスペプシアの原因としては、食べ過ぎ、飲み過ぎ、早食い、深夜の食事、ストレスなどによる消化管の機能障害や知覚過敏などが考えられます。
胃痛の検査
胃内視鏡検査
胃内視鏡検査(胃カメラ検査)では、食道・胃・十二指腸の粘膜の疾患をリアルタイムで観察し、炎症や潰瘍、腫瘍などの有無を調べます。
不審な病変が見つかればその場で組織を採取し、病理検査を行い確定診断もできます。
当院では、日本消化器内視鏡学会の専門医・指導医である豊富な臨床経験を持つ内視鏡検査専門医が、最新の機器を用いて、患者様の負担をできるだけ軽減した迅速かつ正確な検査を丁寧に行います。
腹部超音波検査
腹部超音波検査は非侵襲的な検査であり、内視鏡では確認できない臓器や、腹部レントゲンでは写らない臓器の詳細な状態を調べることが可能です。
特に肝臓、膵臓、胆のう、腎臓、脾臓などを詳しく観察できます。当院では、空腹時であればいつでも腹部超音波検査が可能です。
血液検査
血液検査では採血した血液を分析することにより、炎症反応の有無、貧血の有無、必要に応じて腫瘍マーカーなども確認できます。
胃痛の治療
胃痛の治療は、痛みの原因を特定し、その原因に適した治療を行うことから始まります。長期間にわたって胃痛がある場合や、繰り返し胃痛がある場合は、適切な検査と治療を受けることが重要です。
行動療法
行動療法とは、生活スタイルの改善指導により胃腸を十分に休ませる治療法です。
まずは問診で、日常の食事内容や生活リズムについて詳しく伺います。その上で、栄養のバランスがとれた規則正しい食生活に近づけるための食生活の改善や、十分な睡眠や適度な運動を取り入れ、ストレスを軽減するための生活改善に向けてのお手伝いをします。
薬物療法
薬物療法では、胃酸分泌抑制薬(カリウムイオン競合型アシッドブロッカー、プロトンポンプ阻害薬、H2受容体拮抗薬など)、胃運動機能改善薬(ドパミン受容体拮抗薬、セロトニン受容体作動薬など)、消化管機能を整える漢方薬(六君子湯、半夏瀉心湯など)が、患者様の体質や疾患の状態に応じて処方され、治療に用いられます。
ピロリ菌感染が確認された場合、胃や十二指腸の炎症や潰瘍の再発を効果的に抑えるために除菌治療を行います。